不真面目なバンド男子のお寺ライフ「ファンシイダンス」

あらすじ:大学生活を満喫していた陽平は、実家の寺を継ぐために禅寺で1年間の修行を行う羽目になる。
楽しいバンド生活もかわいい彼女も捨て去って人生の墓場かと思いきや、次第に所作やしきたりに隠れた美しさに魅せられていく。登場人物:
- 塩野陽平 (本木雅弘) - ロックバンドのボーカル。実家は寺。
- 真朱 - 通称まそほさん。陽平の恋人。
- その他ゆかいなお寺の仲間たち

とにかく仏教やお寺って興味深いものだなあと思わせる作りで、知らないことに出会える感覚が楽しい。
仏教の動作も、まずいきなりお寺での修行や儀式の風景が映る。器物を捧げ持ち、衣擦れの音も鮮やかに体をさばき、すり足で所定の位置に進む。まるで舞台芸術のような動作。
そして後のシーンで陽平が、あれはいい、これは心奪われると友人に熱く語る。見ていてすんなりと同意できる。

全体的な雰囲気は大人向けの少女漫画的というか、人の横に明朝体のレタリングで「うんうん」「くるり」などのオノマトペがついてくる感じ。「動物のお医者さん」のような。と思っていたら原作は少女漫画であった。

脇役も地味に豪華。
冒頭の飛行機の乗客には大杉漣、真朱さんの勤める会社には蛭子能収がチラッと映る。
主人公のバンドのバックは東京スカパラダイスオーケストラ。もとはフォークの「若者たち」をスカっぽくアレンジした音楽が、ダメ大学生による人生たのしいな感満載で耳に残る。ちなみにみのすけの担当はお鈴(おりん。仏壇に置いてあるチーンというあれ)。

そして真朱さんの元彼役で1シーンだけ出てくるのが大槻ケンヂ。
ミッション系の大学でバンドやってる奴ということで、燭台やチキンが並ぶいかにも西洋風なディナーを真朱さんと楽しむ。アルバム「サンフランシスコ」のイケイケで尖っている頃の風貌。ソバージュに白手袋で、服は例の特攻服と似たシルエットだがキリスト教徒らしく十字架があしらわれている。神父服というんだろうか?
そして陽平と「バカ!」「アホ!」みたいな低俗な口論の代わりに「喝!」「ホサナ!」「バン!」「ハレルヤ!」となぜか宗教用語対決になり、最終的にはマントラを唱えられ「頭が割れるゥ〜」と退場。
...イロモノ枠だけど予告編にも出てるんだよ。

で、一番驚いたキャスティングが修行僧のうち京都弁を話す優雅なプレイボーイ。彼はなんと彦摩呂であった。エンドロールには役名が出ていなかったので調べるまでまったくわからず。デブタレの印象があるけれど、昔はイケメンだったんですね。
ちなみに修行僧の食いしん坊キャラは田口浩正。彼は十分に面影がある。

陽平はかっちりとした修行僧をめざすわけでもなく、仏教を楽しんでいる感じ。
現実世界で伝統的なものと若者を組み合わせると「真面目に取り組む、若いのに熱心で感心な人物」か「現代の感性に合わせて作り直す、新進気鋭の伝道師」が取り上げられがちだけれど、陽平はあくまで自分の美意識にマッチした仏教を受け入れているだけで、別に仏教に一生を捧げるとか、仏教をどうするとかは考えていない。この絶妙な距離感が心地よかった。


この記事へのコメント