地道な刑事ドラマと見せかけてサスペンス「ブラッド・ワーク」

あらすじ:
連続殺人事件を追っていたベテランFBI捜査官。ある日犯人の追跡中に心臓発作を起こし、引退して臓器提供を待つことになる。
数年かけてドナーが見つかり手術は無事成功したものの、退院した彼を待っていたのはドナーの姉だった。通常はドナーとレシピエントの関係は伏せられるが、彼女は手術の新聞記事から、妹と同じ珍しい血液型の男性が、妹が殺されたすぐ後に手術を受けたことから気づいたという。捜査官の心臓は強盗殺人事件の被害者の物だった。
姉の願いは事件の真相を突き止めること。元プロファイラとして捜査を進めていくうち、単なる行きがかりの強盗事件として片付けられていたはずの事件は次第に不可解な面を見せる。ところでタイトル、FBI捜査官なら「刑事」ドラマとは言えないので...なんと書くべきだったのか。

登場人物
・マッケイレブ(クリント・イーストウッド)- 元FBI捜査官、現場解析(プロファイリング)が専門。
・グラシエラ - 殺人事件の被害者の姉。警察の捜査が進まないことにいらだっており、マッケイレブに捜査を依頼する。


マッケイレブは真面目で思いつめやすいタイプ。だいたい苦い顔つきで、ときどき苦笑いなのか笑顔なのか難しい表情を見せる。

身体面での限界でFBIを辞めたものの、正義感や犯罪に関するスタンスは現役時代と変わらない。むしろ道半ばでキャリアを絶たれたためより強くなっている。しかも移植は事故などではなく殺人が元になったということで「心臓をもらうべきではなかった」と苦い思いを抱えている。こうした想いが集まって、捜査にも熱が入るというもの。
シリアスで問題ごとを抱え込みやすい彼を心配してくれるのが、隣に住むバディ。

バディはフルハウスのジョーイのような見た目のあんちゃん。一日中ハーモニカを吹いたりビールを飲んだり、気ままでちょっとクズっぽいニート暮らし。(仕送り付き)
バイト代は出すから運転士をしてくれとマッケイレブから頼まれ、捜査官の相棒だと言わんばかりに(実際に言うけど)はしゃぎながら捜査について回る。本人としては、これで俺も捜査官だ!といったテンションでいかにも楽しそう。

ちなみに彼らは港に停泊させた船をそれぞれ家がわりにしている。作中、遊びに来た子供が帰りたくないと駄々をこねるが、たしかに魅力的。

一方でマッケイレブは敵が多いというか敵を作りやすい。敵といっても犯人グループではなくて、たとえば事件の管轄のロス市警。引退したはずの捜査官がライセンスもなしにうろちょろするのを煙たがるし、手柄を横取りされるのじゃないかとあからさまに敵対している。主治医も、本来は手術後で安静にすべき時期なのに、心身ともに負担をかけるような捜査活動なんて言語道断と、会うたびに叱ってくる。
アメリカでは捜査には探偵のライセンスがいるらしく、本当は非合法なところを昔のツテやゴリ押しでなんとか進めていくのを見るとヒヤヒヤする。

あとはグラシエラの偏執的なところも気になる。毎日捜査の進捗を聞きたがって警察も手を焼いていたと言うので、妹が殺されて大変だし警察は無能だと思ってるんだろうね...と思っていたら、マッケイレブに対してもガンガンくる。
でもそんな彼女をマッケイレブは毎回軽くいなす。どこまで進んだか聞かれて、さして進んでなくても否定も肯定もせずに「捜査には一見不要そうな細かな情報も必要だ。妹さんがよく行っていた場所はどこかな?」と話をすり替えてしまう。それですこし救われる。

そして中盤からのサスペンス展開。
犯人のゆがんだ動機や目的にぞくっとする、人間が怖いタイプのサスペンス。しかも一見普通の強盗殺人事件を捜査官が資料をかき集めて少しずつ解きほぐす展開のため、潜んでいたサイコパスが徐々にあらわになっていくのも好み。
その割に、最後の直接対決は割と荒っぽい銃撃戦なのが残念。

堅物の捜査官と陽気な相棒のバディムービーでもよし。渋い探偵ものとして見るもよし。サイコパスに怯えるもよし。
いい感じにまとまっていてさらっと見られます。


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